5月の最終週は脳卒中週間。市民公開講座をはじめ、脳卒中に関するさまざまな啓発活動を行っています。「脳卒中予防に大切な5つのステップ(図1)」のうち、特に脳梗塞の前兆であるTIAが生じたら、脳卒中の「崖っぷち警報」であると知っていただくことが本日のテーマです。
TIAは以前、外来で予約した後に診療していましたが、最近では急性脳血管症候群(ACVS)として、脳梗塞同様、緊急に治療すべきであると劇的に考え方が変わりました。
TIAの段階での、すばやい治療で脳卒中を食い止め、脳卒中ゼロを目指しましょう。

脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりして起こる病気です。
脳の血管が詰まる病気には「脳梗塞」と「TIA」、出血する病気には「脳出血」と「クモ膜下出血」があります。日本脳卒中協会は、脳卒中の危険因子、予防するための生活習慣について、わかりやすい標語で表現した「脳卒中予防十か条(図2)」を作成しています。よく読んで、日頃から脳卒中の予防に努めましょう。また、脳卒中の警告サインであるTIAを見逃さないことも脳卒中予防に重要です。TIAは数分で症状が消えてしまうため、患者さんも医師も軽視しがちですが、英国で行われた臨床研究では、TIAが疑われた患者さんに対し、発作から2~3週間たってから薬物治療を開始していた方針を変え、直ちに専門施設に送るようにしたところ、脳卒中の発症率が大幅に減少しました。TIAが疑われたら、一刻も早く予防治療を開始するよう救急車を呼んでください。スピードが命です。

脳卒中の7割以上を占める脳梗塞は脳の血管が詰まって、脳の組織が死んでしまう病気です。そのため、脳梗塞患者さんの75%は手足の麻痺や言語障害など、何らかの後遺症を伴い、症状によっては社会的生命が絶たれてしまうこともあります。脳梗塞を予防するためにも、脳梗塞の前兆であるTIAを見過ごすわけにはいきません。TIAも脳梗塞同様、脳の血管が詰まり、症状が現れますが、血管のつまりがとれると症状は消えます。TIAから2週間以内に脳梗塞になった人の半数以上が48時間以内に脳梗塞になっています。
特に、60歳以上、高血圧や糖尿病、TIAの持続時間が10分以上、過去に心房細動や頸動脈狭窄と診断されたことがある方は注意が必要です。TIAが疑われたら、救急で専門病院へ行くことを忘れずに。「顔、腕、言葉で、すぐ受診(図3)」を是非覚えて、大切な家族、友人、そして自分自身を脳卒中から守りましょう。

TIAが起こったら、近い将来、脳梗塞を起こす可能性がある崖っぷちに立っていることを意識しなければなりません。では、TIAが起こったらどうしますか。誰に相談し、どのように行動したらよいでしょうか。まずはできるだけ早く専門病院を受診します(図4)。どの病院へ行くべきかわからない場合は、かかりつけ医に相談し、専門病院を紹介してもらいましょう。ご自分で運転して病院に行くことはおすすめできません。運転中に麻痺が再発すると危険であり、またTIAが疑われる方は原則入院しなければならないからです。入院し、TIAが起こった原因は一体どこにあるか調べ、脳梗塞を起こすリスクを評価し、適切な脳梗塞の予防治療を早急に開始します。治療は、抗血栓薬のほか、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、心疾患などのリスク管理、外科手術の3本柱で行います。

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| 高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動などの心臓病が原因となりますので、これらを十分にコントロールしましょう。禁煙もすべきです。1日30分程度の運動は脳梗塞発症にブレーキをかけると報告されています。 | ||
| 脳梗塞は遺伝が原因で起こる病気ではありません。しかし、脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などは、遺伝と生活習慣の両方が関係しています。このような病気をもち、好ましくない生活習慣を続けていると動脈硬化が進み、脳梗塞は起こりやすくなります。 | ||
| 両手がしびれる場合、TIAではないと思われます。左右両方の脳の血管が詰まったり、やぶれたりすることは非常にまれです。TIAは左右どちらかの脳の血管が一時的に詰まる病気です。片側の手や足、顔にしびれが突然現れたら、TIAが疑われます。 | ||
厚生労働省の調査によると、がん、心疾患に続き、死因の第3位である脳卒中。 しかし、脳卒中の本当に怖いところは後遺症を伴うことであり、その結果、寝たきりになる原因の第1位となっています。脳卒中になって後悔する前に、脳卒中を予防することが大切です。 日本脳卒中協会では、今後3増加し続けると予想される脳卒中に対し、シームレスケア(継ぎ目のない医療体制)が実施できるように、「脳卒中対策基本法」の立法化を提唱しています。 脳卒中ゼロを目指して、共に頑張っていきましょう。





